遠くの近所(ペーパー余白第1号より)

遠くの近所では、自分と再会することができる。忘れかけていた大切なものを、もう1度思い出すことができる。

それは、どこかひとつの場所だけを指すわけではない。

時々、自分が生まれるずっと前に存在していたものを、「なつかしい」と感じることがある。これなんか、まさに遠くの近所だ。心がなついている。

それは例えば、ラジオから流れてきた古いアメリカン・ポップスかもしれないし、路地奥に広がる市場の風景かもしれない。遠くの町で暮らす友人かもしれないし、少し前に買って、まだ読み始めていない本のこともあるだろう。

自分だけの、遠くの近所。

どんな時代でも、どんな場所でも、きっとあるはずだ。