ちょうどいいコーヒーの見つけ方

第4回 焼き具合で変わる色々

 コーヒー豆は、種子の部分。生では食べられないので、焼いてこそ美味しくなる。焼く前の生豆の評価は難しく、あまりアテにならない。というわけで、今回は焙煎度(焼き方や焼き具合)を考えてみる。焼き具合によって色々と変わる。

 同じ原料でも、加工の方法によって色々と変わるものの代表は、「茶」だろうか。「茶」は、名前まで変わるから分かりやすい。同じ茶葉でも、発酵度の違いによって、「紅茶」「ウーロン茶」「緑茶」などと名前が変わる。それぞれの風味や愉しみ方は全く異なる。

 一方、コーヒーは焼き具合が変わっても「コーヒー」のままだ。「浅煎り」「中煎り」「深煎り」ではなく、「栗コーヒー」「茶コーヒー」「黒コーヒー」とでも名前を変えていたら、もっと見え方が違ったのかもしれない。

 焼き具合が変わると、茶と同じく、風味や愉しみ方が異なる。それは、たとえ同じ豆であっても。だから、「ブラジルは・・・」「エチオピアは・・・」「ハニー製法で高地産のコスタリカは・・・」というように、ひと括りに特徴を語ることはできない。浅く焼いたエチオピアと、深く焼いたエチオピアは、全く別のコーヒーになる。

 浅めに焼けば、どんな豆でも酸味が強く出るし、生豆由来の香りも多くなる。どちらかと言えば、鼻先で感じる漂っている香りが多いので、「香りを楽しむ」だけであれば、浅く焼くのがいい。

 そこから深く焼くにつれて、酸味は減り、コクが強くなる。飲んだ後に、口の中で感じる香りが増えてくる。焼くことによる香ばしさやコーヒー感も強くなるので、生豆の「個性」よりも、「THE コーヒー」に近づくことが多い。

 この焼き具合のグラデーションが、どんなコーヒー豆にもある。本来、豆ごとの特徴の比較は、焼き具合をすべて揃えないとできない。「紅茶専門店」「ウーロン茶専門店」のように、「浅煎り専門店」「深煎り専門店」が増えると、そういう愉しみ方もできるかもしれない。

 焼き具合で知っておいた方がいいのは、例えば、何が「浅煎り」かというポイントが、店によってバラバラだということだ。あくまでも、そのお店の中で、浅めなのか、深めなのかという感覚で見た方がいい。このあたりの感覚が、自分の感覚と合っていれば、その店はあなたにとって素敵な店だ(雑誌に載っていたから・・食べログで何点だったから・・は関係ない)。

 なので、はじめて行った店では、その店の「中煎り(あるいは、中深煎り)」の中から選ぶといいかもしれない。それが、その店の真ん中だからだ。そこで酸味が強すぎたり、苦味が強すぎたり、重すぎたりする場合は、あまり合っていないかもしれない。

 あるいは、自分の好みの焼き具合があるのなら(ウーロン茶には興味ないけど、紅茶はすごく好き、みたいに)、それを選ぶのがいいかもしれない。「あー、これこれ」という感じがきちんと合えば、とても美味しく感じるだろう。そんな時、その生豆の世界的な評価なんて、どうだっていいのだ。

 味覚や嗅覚以外にも、焼き具合を身体で感じることができるのが、「豆を手で挽く」ことだ。手動のミルを使って、ゴリゴリと挽いたことがある人は感じたことがあるだろうが、豆のかたさが違う。

 浅く焼けば、豆はかたい。深く焼けば、軽くなる。表面は深めに見えても、中身に上手く火が通っておらず、生焼けになっているような時は、思ったよりもかたいな、なんて分かり始める。手動のミルを使う良さは、そういうところにもある。身体でコーヒーを愉しむことができるし、日常の感覚も磨かれる。上手くほぐれるような豆は、美味しいのだ。

 また、コーヒーを淹れる時にも気付くことがある。浅めの豆は、水分が多いので、表面がシャバシャバしやすい。中くらいは馴染みやすく、深すぎると新鮮でも膨らまない。もちろん、焼き具合によって、成分が異なるのだから、適した淹れ方も少しずつ変わってくる。そのあたりもまたいつか。

 もし、日本全国でコーヒー豆が栽培されていたら、きっと地産地消になっていただろう。「どこどこ産の、どの生豆は~」なんて言わずに、地元で採れたものを、自分は深めに焼こうとか、そうやって愉しんでいたのかもしれない。コーヒー豆って、本来そういうものだ。

 よっぽど悪くなければ、どの豆だって、好みの焼き具合にして美味しく飲める。現状、家で豆を焼く人はすごく少ないと思うので、いわば店側は、代わりにきちんと焼く仕事だ。「この豆の個性は、この焙煎度が一番しっかり出ます・・・」なんて勝手な言い分を聞いたことがあるかもしれないが、それでもやっぱり、好みの焙煎度がちょうどいい。

 次回は、「ちょうどいい」豆を見つけるために、良い店について考えてみる。