むだ

〆の無駄話 1話

店の名前をつけることについて

コーヒー屋の名前を付けることに、それほど苦労はしなかった。もちろん、名前なんて何でもいい、というわけではない。名は体を表す。

ただし、これには条件がある。「しっくりくる言葉」を使うことだ。

今調べたばかりの、それっぽい言葉を名前にすると、それっぽいだけの店が出来上がる。「しっくりくる言葉」とは、何かを表現しようとした時に、それまでの経験から、実感を伴って自然と出てくる言葉。

例えば、「温かみ」を表現する時、どのような言葉を使うだろうか。

ある人にとっては、「スープのにおい」かもしれない。ある人にとっては、「屋台のラーメンの湯気」かもしれない。心温まる想い出があるのなら、「冬のかき氷」だっていい。

さて、僕の場合。

コーヒーの「温かみ」を表現しようとした時に、ひとつの言葉がすっと出てきた。所要時間、約1分。それが、「余白」だった。

 

「余白」とは

人生は、思い通りにはいかない。誰かに教えてもらうわけではなく、多くの人が身に染みて感じることだ。失敗や失恋などを通して。

今、自分の理想や夢をノートに書きつけるとしたら、あなたはどんな物語にするだろうか。

それが、たとえどれほど美しい物語だとしても、あるいは、どれほど現実的な物語だとしても、そこには必ず「余白」が生じる。人生のすべてを、あなたの物語で埋め尽くすことはできない。

そこには行間があり、文字のスキマがある。

「余白」とは、あなたの人生の「思い通りにいかない部分」のことだ。

それは例えば、物語では省略されるようなつまらない日常。見せたくない自分。失敗や挫折。

でも、「余白」があることは、悪いことばかりではない。

そのスキマには、偶然の出逢いがあり、縁がある。「余白」があるからこそ、人生は美しくもなるし、面白くもなる。

「余白」に嫌気が差し、ため息をついたのなら、コーヒーでも飲もう。

ひと息ついた後には、温かな「余白」が見えるかもしれない。